数覚とは何か?
心が数を創り、操る仕組み
スタニスラス・ドゥアンヌ
- 作者: スタニスラスドゥアンヌ,Stanislas Dehaene,長谷川眞理子,小林哲生
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/07/01
- メディア: 単行本
- 購入: 5人 クリック: 144回
- この商品を含むブログ (31件) を見る
本書は、数学に関する本で数式などは無いポピュラーサイエンスです。人間はなぜ数を理解できるのか、数を理解するという能力、数学的認知能力、数覚(ナンバーセンス)に、認知科学、神経科学、心理学の実験を駆使して迫っていきます。数に関する興味深い話が盛りだくさんとなっています。
本書の第一部では、遺伝的に受け継いだ数の能力の由来を明快に説明する。認知心理学の実験が明らかにしたのは、人間の生後6ヶ月の赤ちゃんもサルもラットも「知覚対象を数へ抽象化する」能力を持ち、数を認識し、簡単な足し算引き算ができるという衝撃的な事実です。それは脳が進化の過程で獲得した能力でした。なぜならそれが生存に有利だからです。量と比較の認識は、例えばより多くの餌を間違いなく手に入れることを可能にし、生き残って子孫を繁栄させる可能性を高めます。我々は(サルもラットも)その子孫だから、この能力を先天的に持っているのです。
この能力には「1から3まで」という制限があり、「4」以上になると認識が途端に怪しくなるというのも興味深いです。ほとんどの言語で「4」以上の数詞表記がいきなり複雑になる理由になってます。膨大な数学体系が「1、2、3」というシンプルな三つの概念だけを基礎に組み上げられた不思議に驚きます。その結果である数学体系がなぜ物理的世界と矛盾しないのかという問題は本書の後半で検討され、我々の常識を根底から覆すような驚くべき解釈がなされます。
後半では数学とは何かという哲学的な問題も扱っていて、数学的プラトン主義にも脳科学の立場から言及していて興味がつきません。数学に興味のある人、学習しているひと、数学の教育に関わる人全てにオススメできます。
本書はまた、数学の天才たちの不思議な精神世界を伝え、脳と数と数学に関係する数多くの興味深いトピックを提供しています。本書は、数字について様々なことを提供し、考えることの大切さを教えてくれます。
内容紹介
数をめぐる脳内ネットワークの不思議な実態を明かす明著登場。数の脳内処理に関する第一人者がさまざまな実験の豊富な実例を駆使して、ヒトや動物の数を扱う能力=「数覚」とその意外な実態について綴る、脳科学ファンも数学ファンも必読のポピュラー・サイエンス。
著者等紹介
ドゥアンヌ,スタニスラス(Dehaene,Stanislas)
1965年、フランスのルーベ生まれ。もともと数学者であったが、脳が言語と数を処理する能力の研究に惹かれ認知心理学・神経科学に転身した。現在コレージュ・ド・フランス教授(実験認知心理学)、フランス原子力庁・国立衛生医学研究所付属のオルセー認知神経イメージング研究所所長。『数覚とは何か?―心が数を創り、操る仕組み』によってジャン・ロスタン賞を受賞した 。
長谷川眞理子(はせがわ・まりこ)
1976年東京大学理学部卒業。1983年東京大学大学院博士課程修了。理学博士。東京大学理学部人類学教室助手、早稲田大学政経学部教授などを経て、総合研究大学院大学教授。専攻は人間行動進化学、行動生態学、進化心理学 。
小林/哲生(こばやし・てっせい)
2004年東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。NTTコミュニケーション科学基礎研究所協創情報研究部研究主任。専門は発達心理学、言語心理学、比較認知科学。
目次
まえがき
はじめに
第1部 遺伝的に受け継いだ数の能力
第一章 才知にあふれた動物たち
第ニ章 数える赤ちゃん
第三章 おとなの脳に埋め込まれた心の物差し
第2部 概数を越えて
第四章 数の言語
第五章 大きな計算のための小さな頭
第六章 天才たち、神童たち
第3部 神経細胞と数について
第七章 数覚の喪失
第八章 計算する脳
第九章 数とは何か?
訳者 あとがき
さらに知りたい人のために
参考図書
関連サイト
「奇蹟がくれた数式」は数学者から見える驚くべき世界を教えてくれる ...
https://www.huffingtonpost.jp/hotaka-sugimoto/mathematician-movie_b_12579850.html