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ありえない138億年史ー宇宙誕生と私たちを結ぶビッグヒストリー

ありえない138億年史

宇宙誕生と私たちを結ぶビッグヒストリ

ありえない138億年史

 本書の特色は、宇宙、地球、生命、人間を、ビッグバンによる宇宙誕生から現在に至る壮大な歴史科学『ビッグヒストリー』(著者は過去全体を理解しようとパノラマ的な視点からみた歴史と表現してます)として書かれてます。これは物理学、化学、地質学、古生物学、考古学、天文学、宇宙学などの研究者が学問のボーダーを越えて取り組んできた成果です。著者は隕石による恐竜絶滅を発表したことで有名な米国の地質学者である「ウォルター・アルバレス」です。

138億年前にビッグバンで宇宙が誕生した数億年後に最初の星が生まれました。太陽の40倍もの質量を持つこの星は数百万年後に大爆発して無数の星となり、やがて星の集団が作られ、銀河ができます。太陽系の誕生は、今からおよそ50億年前であり、地球ができたのが46億年前です。その地球は月を誕生させ、地殻変動(プレート・テクニクス)を繰り返すことによって今の形に近づいていきます。

偶然に地球に水があったことから細胞が生まれ、それが多細胞生物、魚、爬虫類、哺乳類へと進化を遂げていきます。6500万年前の巨大隕石が地球を直撃するまでは恐竜が地球を支配していました。哺乳類が主役になるのはそれ以降です。人類が現れたのは数百年前でした。

宇宙誕生から現在までの道筋は何らの周期性、法則があったのでは、との疑問を多くの研究者が抱いてました。しかし、そういうものはなくて、すべて自然の制約を受けながら無数の偶然により展開されたというのが結論です。たとえば、月は地球にとってなくてはならない役割を果たしていますが、月がなかった可能性、月が2つある可能性も同じくらいあったといいます。もしそうだとしたら地球はいまと同じではないはずです。

「エピローグ」で著者は、私たち一人ひとりの誕生の奇跡を語っています。両親が、祖父母たちが出会ったのは偶然であって、わずかな可能性の中から私たちが生まれた。同様に宇宙誕生以来続く「偶然の連鎖」がその時々の資源を生かして地球や人類を発展へと繋いできました。

表題の「ありえない Improbable」には、私たちが存在しているのは138億年前からの無数の「偶然の連続」によるものである、という意味が含まれています。人間の世界を『ビッグヒストリー』という発想を取り入れることで人類の歴史の捉え方が従来の見かたとは違ってくるはずです。 

本書を通じて『ビッグヒストリー』という発想を知ったことで、自分の命がここまで繋がってきた不思議に思いを馳せることが出来ました。

内容紹介

歴史は必然ではない。偶然が重大な役割を担っている。宇宙、地球、生命、人間の各領域において、この世界が実際にたどった道とは異なる道をたどる可能性は無数にあった。その結果、今日のものとは異なる人間世界が生まれる可能性もあれば、人間世界がまったく生まれない可能性もあったのだ。
そのため、今あるこの世界を理解するには、物理学や化学を超えて、地質学や古生物学、生物学、考古学、天文学、宇宙学などの歴史科学の領域から人間の歴史へと目を向けるべきだろう。これらの歴史科学や歴史学が、今あるこの世界の歴史について学びつつあることを知る必要があるのだ。

引用元:光文社

 著者等紹介

ウォルター・アルバレス( Walter Alvarez)
1940年アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー生まれ。地質学者。現在はカリフォルニア大学バークレー校にて、地球および惑星科学の教授を務める。ノーベル物理学賞を受賞した父親のルイス・ウォルター・アルヴァレズとともに、隕石の衝突による地球上の生物(恐竜を含む)の大量絶滅の理論を発表したことで知られる。彼らは、白亜紀と第三紀の境界に位置する粘土層から、極めて高い濃度のイリジウムを検出した。イリジウムは小惑星には普通に含まれる元素だが、地表では極めて少ない。彼らは、小惑星が地球に衝突したことによってイリジウムがもたらされ、それが白亜紀‐第三紀における大量絶滅の原因となったのではないかと推測した。その後、隕石が衝突したクレーター(メキシコ、ユカタン半島のチクシュルーブ・クレーター)も発見され、大半の科学者が隕石衝突による大量絶滅を認めている。

山田 美明(やまだ よしあき)
英語・フランス語翻訳家。東京外国語大学英米語学科中退。訳書に『喰い尽くされるアフリカ』(トム・バージェス著、集英社)、『AI時代の勝者と敗者』(トーマス・H・ダベンポートほか著、日経BP社)、『動物たちの武器』(ダグラス・J・エムレン著、エクスナレッジ)、『森の人々』(ハニヤ・ヤナギハラ、光文社)、『ISの人質』(プク・ダムスゴー著、光文社新書)などがある。

目次

本書によせて 京都大学大学院人間・環境学研究科 教授 鎌田浩毅
序――宇宙、地球、生命、人間からなるビッグヒストリー
第1章 ビッグヒストリーから見た地球と人間世界
第2章 ビッグバンから地球誕生まで
第3章 地球からの贈りもの
第4章 大陸と海洋を持つ惑星
第5章 二つの山脈の物語
第6章 古代の川の記憶
第7章 人間の体に刻まれた生命の歴史
第8章 大いなる旅路
第9章 人間という種の特徴
エピローグ これまでの歴史がすべて起こる可能性は?