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天皇と東大

合本  天皇と東大【文春e-Books】 

 立花隆  文藝春秋

 

合本 天皇と東大【文春e-Books】

合本 天皇と東大【文春e-Books】

 

  本書は、「東大という覗き窓」を通して、近代国家成立の前史から、大日本帝国の終わりまでを見渡した畢生の大作です。

 本書の中で著者自身も述べている事ですが、「あの時代」(昭和戦前期)の「ファナティックな」空気を知りたかったと、実際、非常に伝わりやすく、東大生が体験した8月15日(https://books.bunshun.jp/articles/-/3737)もあわせて読んで、深めてみることをお勧めします。

 平均余命が40代とはいえ、太平洋戦争末期にはわずか10代の兵士、現代においては高校生が兵士として借り出され、あるものは未熟な特攻隊として、あるものは魚雷の人柱として死んでゆく世界。東条英機の「戦時訓」はあまりにも有名だが、それを支える、まさに「ファナティックな」議論が国民全体に成立していたのです。

 有名な天皇機関説問題、しかり、政治家の暗殺犯に世論が同情する異常事態、いったいこれを厳罰に取り締まらずして、何を罰せよというのだろうか。今ならそう考えるでしょう。しかし、当時、貧困、格差にあえぐ人々がその怒りの矛先を、金持ちや権力者に向けなければならなかった程、生活は乱れ、逼迫していたし、暗殺犯の生まれる土壌が、十分あったわけです。

 戦後、力道山とプロレスの一時代を築いた元柔道家が、東条暗殺にかかわっていたようで、その意味では極右と呼ばれる人達も一枚岩ではいかないようです。そうした複雑な状況、糸の絡んだ状態を程よく溶いてくれるのが、本書です。


 令和の時代に、改めて、明治、大正、昭和がどのような時代だったか、理解する上で本書をお勧めします。

内容紹介

なぜ日本人は、あのバカげたとしかいいようがない戦争を行ったのか。
日本が大破局への道を歩き始めた昭和戦前期、日本の歴史の大転換を中心的に動かしたのは、天皇という存在だった。
その大転換が起きた主たる舞台は東大だった。
天皇イデオロギーと反天皇イデオロギーとの相克が最も激しく起きた舞台も東大だった。
「東大という覗き窓」を通して、近代国家成立の前史から、大日本帝国の終わりまでを見渡した著者、畢生の大作が一冊に!

<主な内容>
東大は勝海舟が作った/慶応は東大より偉かった/早大の自立精神、東大の点数主義/「不敬事件」内村鑑三を脅した一高生/日露開戦を煽った七博士/元白虎隊総長・山川健次郎の奔走/東大経済は一橋にかなわない/大逆事件と森戸辰男/大正デモクラシーの旗手・吉野作造/”右翼イデオローグ”上杉慎吉と大物元老/東大新右翼ホープ岸信介/新人会きっての武闘派・田中清玄/河上肇とスパイM/血盟団安岡正篤血盟団事件 幻の”紀元節テロ計画”/共産党「赤化運動」激化と「一人一殺」/日本中を右傾化させた五・一五事件と神兵隊事件/狂信右翼・蓑田胸喜と滝川事件/美濃部達吉統帥権干犯問題を撃つ/ゾルゲ・昭和天皇平沼騏一郎天皇機関説論争が招いた二・二六事件昭和天皇満州事変/東条が心酔した平泉澄皇国史観/「太った豚」による矢内原忠雄追放劇/「大逆」と攻撃された津田左右吉の受難/戦時経済の寵児・土方成美 絶頂からの転落/粛学の立役者、田中耕太郎の四面楚歌/反ファッショ人民戦線と河合栄治郎/平賀東大 戦時体制下の大繁栄/南原繁総長と昭和天皇退位論/天皇に達した東大七教授の終戦工作

著者紹介

立花 隆(たちばな・たかし)

昭和15(1940)年長崎県生まれ。39年東京大学仏文科卒業。49年「田中角栄研究―その金脈と人脈」(「文藝春秋」11月号)で金脈批判の先鞭をつけ、以後精力的に腐敗政治批判を続けている。知的関心は幅広く、その徹底した取材と卓抜な分析力による文筆活動で、58年菊池寛賞、平成10年司馬遼太郎賞受賞。

目次

東大は勝海舟が作った/慶応は東大より偉かった/早大の自立精神、東大の点数主義/「不敬事件」内村鑑三を脅した一高生/日露開戦を煽った七博士/元白虎隊総長・山川健次郎の奔走/東大経済は一橋にかなわない/大逆事件と森戸辰男/大正デモクラシーの旗手・吉野作造/”右翼イデオローグ”上杉慎吉と大物元老/東大新右翼ホープ岸信介/新人会きっての武闘派・田中清玄/河上肇とスパイM/血盟団安岡正篤血盟団事件 幻の”紀元節テロ計画”/共産党「赤化運動」激化と「一人一殺」/日本中を右傾化させた五・一五事件と神兵隊事件/狂信右翼・蓑田胸喜と滝川事件/美濃部達吉統帥権干犯問題を撃つ/ゾルゲ・昭和天皇平沼騏一郎天皇機関説論争が招いた二・二六事件昭和天皇満州事変/東条が心酔した平泉澄皇国史観/「太った豚」による矢内原忠雄追放劇/「大逆」と攻撃された津田左右吉の受難/戦時経済の寵児・土方成美 絶頂からの転落/粛学の立役者、田中耕太郎の四面楚歌/反ファッショ人民戦線と河合栄治郎/平賀東大 戦時体制下の大繁栄/南原繁総長と昭和天皇退位論/天皇に達した東大七教授の終戦工作

参考図書

近代と現代の間: 三谷太一郎対談集

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崩御と即位―天皇の家族史 (新潮文庫)

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東大生が体験した「8月15日」 | 特集 - 文藝春秋BOOKS


https://books.bunshun.jp/articles/-/3737 
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