知の旅は終わらない
僕が3万冊を読み100冊を
書いて考えてきたこと
本書は、 類い稀なる好奇心と洞察力で「知の巨人」とよばれている立花隆氏の自伝です。立花隆氏の特徴を簡単に述べると、「ある分野の本を書き上げるためにはその分野を徹底的に調べあげ、莫大な量の本を読み専門家顔負けの知識を得て、読者にわかりやすく説明出来る人」ということでしょう。
立花隆氏は、本書の中で意味深な言葉を述べてます。それは、「すべての人の現在は、結局その人が過去に経験したことの集大成としてある」と力説します。そして、若い頃に世界を旅してきた経験から紡がれる言葉には重みがあります。漂流者のごとく好奇心の導くままに仕事を続けてきたと語る立花隆氏の仕事と人生がこの一冊の本に要約されています。
幼少時に北京からの引き揚げを体験をして、その後の人生は何が起こっても動じなくなったと述壊します。また、青春時代の膨大な読書歴にを経て、大学生時代には青年会議出席のためヨーロッパを巡って世界観が変わったことを述懐します。
卒業後物書きの仕事について田中角栄研究へと至りますが、立花隆氏にとっては、政治の世界は本来興味の無い分野であったにも関わらず、長年携わったのは権力に対する深い反抗心がそうさせたと述壊します。近年の角栄再評価の動きを一刀両断しているのも印象的です。
その後は科学や医療など様々な分野で多くの著書を世に出した立花隆氏ですが、2007年にがんが発覚し何度も手術を繰り返して現在に至ります。そして死ぬことは怖くなくなったと自身の死生観を語ります。
個人的に立花隆氏の著作の中で一番好きな本は、宇宙飛行士にとって宇宙体験とはどいう体験で、その後の人生にどういう影響を与えたかを主に書かれてある『宇宙からの帰還』です。本書の中でも『宇宙からの帰還』に関する取材エピソードが書かれてます。まだ、読んでない方には、お勧めします。
内容紹介
立花隆を要約するのは非常に困難である。まさに万夫不当にして前人未踏の仕事の山だからだ。時の最高権力者を退陣に追い込んだ74年の「田中角栄研究ーその金脈と人脈」は氏の業績の筆頭として常に語られるが、ほぼ同時進行していた『日本共産党の研究』で左翼陣営に与えた激震はそれ以上のものがある。
『宇宙からの帰還』にはじまるサイエンスものでは、『サル学の現在』でサルと人間に細かく分け入り、『精神と物質 分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか』でノーベル賞科学者の利根川進に綿密な取材を施し、『脳死』では安易な脳死判定基準に鋭く切り込んだ。科学を立花ほど非科学者の下に届けてくれた書き手はいない。浩瀚な書物である『ロッキード裁判とその時代』『巨悪vs言論』『天皇と東大』『武満徹・音楽創造への旅』は余人の及ばない仕事であり、また旅を語っても、哲学、キリスト教、書物を論じても冠絶しておもしろい。
立花隆はどのようにして出来上がったのか、そして何をしてきたのかーー。それに迫るべくして、彼の記憶の原初の北京時代から、悩み多き青春期、中東や地中海の旅に明け暮れた青年期、膀胱がんを罹患し、死がこわくなくなった現在までを縦横無尽に語りつくしたのが本書である。彼が成し遂げた広範な仕事の足跡をたどることは、同時代人として必須なのではないだろうか。引用元:文芸春秋BOOKS
著者紹介
立花 隆(たちばな たかし)
1940年長崎県生まれ。64年東京大学文学部仏文科卒業後、文藝春秋新社入社。66年退社し、翌年東京大学文学部哲学科に学士入学。在学中から文筆活動を始める。74年『文藝春秋』に発表した「田中角栄研究―その金脈と人脈」は時の総理大臣を退陣に追い込み、社会に大きな衝撃を与えた。
著作(ウキィペディアより)
※文庫版は版元や巻数が、初版底本と同一の場合は記述省略。
- 『素手でのし上がった男たち』番町書房 1969
- 『思考の技術』日経新書 1971、中公文庫 1990
- 『日本経済・自壊の構造』日本実業出版社 1973。菊入龍介名義
- 『中核 vs 革マル』全2巻 講談社 1975、文庫 1983
- 『田中角栄研究』講談社 1976(のち新版+文庫 全2巻)
- 『文明の逆説 危機の時代の人間研究』講談社 1976(のち文庫)
- 『日本共産党の研究』講談社 全2巻 1978(のち文庫 全3巻) 第1回講談社ノンフィクション賞受賞
- 『ジャーナリズムを考える旅』文藝春秋 1978(のち改題『アメリカジャーナリズム報告』文春文庫)
- 『アメリカ性革命報告』文藝春秋 1979(のち文庫)
- 『農協』朝日新聞社 1980(のち文庫)
- 『ロッキード裁判傍聴記』全4巻、朝日新聞社 1981〜85(のち改題『ロッキード裁判とその時代』朝日文庫)
- 『田中角栄いまだ釈明せず』朝日新聞社 1982(のち改題『田中角栄新金脈研究』朝日文庫)
- 『宇宙からの帰還』中央公論社 1983、中公文庫 1985
- 『「知」のソフトウェア』講談社現代新書 1984
- 『青春漂流』講談社スコラ 1985 (のち講談社文庫)
- 『論駁--ロッキード裁判批判を斬る』全3巻 朝日新聞社、1985-86(のち文庫)
- 『脳死』中央公論社 1986(のち文庫)
- 『脳死再論』中央公論社 1988(のち文庫)
- 『同時代を撃つ 情報ウオッチング』全3巻、講談社 1988-90(のち文庫)
- 『サイエンス・ナウ』朝日新聞社 1991(のち文庫)
- 『サル学の現在』平凡社 1991(のち文春文庫 全2巻)
- 『脳死臨調批判』中央公論社 1992(のち文庫)
- 『電脳進化論 ギガ・テラ・ペタ』朝日新聞社 1993(のち文庫)
- 『巨悪 vs 言論』文藝春秋 1993(のち文庫 全2巻)
- 『臨死体験』文藝春秋(全2巻) 1994(のち文庫)
- 『ぼくはこんな本を読んできた』文藝春秋、1995(のち文庫)
- 『インターネット探検』講談社、1996
- 『脳を究める』朝日新聞社、1996(のち文庫)
- 『立花隆の同時代ノート』講談社、1997
- 『インターネットはグローバル・ブレイン』講談社、1997
- 『立花隆・100億年の旅』朝日新聞社、1998(のち文庫)
- 『100億年の旅2 宇宙・地球・生命・脳 その原理を求めて』朝日新聞社、1999(のち文庫)
- 『100億年の旅3 脳とビッグバン』朝日新聞社、2000(のち文速読術』文藝春秋、2001(のち文庫)
- 『東大生はバカになったか 知的亡国論+現代教養論』文藝春秋、2001(のち文庫)
- 『解読「地獄の黙示録」』文藝春秋、2002(のち文庫)
- 『「田中真紀子」研究』文藝春秋、2002(改題「政治と情念」文春文庫)
- 『「言論の自由」VS.「●●●」』文藝春秋、2004
- 『イラク戦争・日本の運命・小泉の運命』講談社、2004
- 『シベリア鎮魂歌 香月泰男の世界』文藝春秋、2004
- 『思索紀行 ぼくはこんな旅をしてきた』書籍情報社、2004
- 『エーゲ 永遠回帰の海』書籍情報社、2005、須田慎太郎(写真)。ちくま文庫、2020
- 『天皇と東大 大日本帝国の生と死』文藝春秋(全2巻)、2005、文庫(全4巻)2012-13
- 『滅びゆく国家 日本はどこへ向かうのか』日経BP社、2006
- 『ぼくの血となり肉となった500冊 そして血にも肉にもならなかった100冊』文藝春秋 2007
- 『小林・益川理論の証明 陰の主役Bファクトリーの腕力』朝日新聞出版、2009
- 『立花隆の書棚』中央公論新社、2013、薈田純一(写真)
- 『自分史の書き方』講談社、2013。講談社学術文庫、2020
- 『読書脳 ぼくの深読み300冊の記録』文藝春秋、2013、文庫 2016
- 『四次元時計は狂わない 21世紀文明の逆説』文春新書、2014
- 『死はこわくない』文藝春秋、2015、文庫 2018
- 『武満徹 音楽創造への旅』文藝春秋、2016
- 『「戦争」を語る』文藝春秋、2016
- 『知的ヒントの見つけ方』文春新書、2018
- 『知の旅は終わらない 僕が3万冊を読み100冊を書いて考えてきたこと』文春新書、2020
対談・編著・共著
- 『遊びの研究』三一書房 1976
- 9つの討論会の司会を務め、「現代人における<遊び>の構造」を執筆
- 『われらが青春―安東仁兵衛対談集』現代の理論社 1979
- 『ランダムな世界を極める』米沢冨美子との対話、三田出版会 1991、平凡社ライブラリー 2001
- 『脳死 NHKスペシャル』 NHK取材班と共編著、日本放送出版協会 1991
- 『宇宙よ』 秋山豊寛との対話、文藝春秋 1992(のち文庫全2巻)
- 『マザーネイチャーズ・トーク』新潮社 1993(のち文庫) 8人との対話集
- 『生、死、神秘体験 対話篇』 書籍情報社 1994(講談社文庫 2007) 10人との対話集
- 『宇宙を語る 立花隆・対話篇』 書籍情報社、1995(中公文庫全2巻 2007) 文庫化で講演記録を増補、7人との対話集
- 『証言・臨死体験』文藝春秋 1996(のち文庫) インタビュー集
- 『生命・宇宙・人類』角川春樹事務所 1996 埴谷雄高へのインタビュー
- 『無限の相のもとに』埴谷雄高との対話、平凡社、1997
- 『立花隆のすべて』 文藝春秋 1998(のち文庫全2巻) インタビューほかの編著
- 『環境ホルモン入門』東大教養学部立花隆ゼミ共編、新潮社、1998
- 『サイエンス・ミレニアム』中央公論新社 1999(のち文庫) 科学者との対話集
- 『二十歳のころ 東大教養学部立花隆ゼミ』 新潮社 1998、68名へのインタビュー編著
- 『二十歳のころI 1937-1959』、『-II 1960-2001』 新潮文庫 全2巻、2002/ランダムハウス講談社 全2巻 2008
- 『東大講義人間の現在1 脳を鍛える』 新潮社、2000(のち文庫) 編著
- 『新世紀デジタル講義』 新潮社、2000(のち文庫) 編著
- 『立花隆「旧石器発掘ねつ造」事件を追う』朝日新聞社、2001、編著
- 『読む力・聴く力』 岩波書店、河合隼雄、谷川俊太郎との共著 2006(のち岩波現代文庫)
- 『南原繁の言葉』東京大学出版会 2007 編者代表
- 『戸塚洋二 がんと闘った科学者の記録』 文藝春秋 2009 共編著
- 『ぼくらの頭脳の鍛え方 必読の教養書400冊』 佐藤優との対話、文春新書、2009
- 『未来をつくる君たちへ 司馬遼太郎作品からのメッセージ』 関川夏央、松本健一、日本放送出版協会 2009
- 『白川静読本』 五木寛之、松岡正剛、宮城谷昌光、内田樹、町田康、押井守ほか多数 平凡社 2010
- 『がん 生と死の謎に挑む NHKスペシャル』 NHK取材班 文藝春秋 2010、番組DVD付き、のち文庫(DVDはなし)
- 『二十歳の君へ―16のインタビューと立花隆の特別講義』 東京大学立花ゼミ+立花隆 文藝春秋 2011
- 『私と宗教』 平凡社新書 2011。高村薫、小林よしのり、小川洋子、荒木経惟、高橋惠子、龍村仁、細江英公、想田和弘、水木しげる
- 『「こころ」とのつきあい方 13歳からの大学授業(桐光学園特別授業IV)』 桐光学園中学校・高等学校、御厨貴、高山宏、宮島達男ほか 水曜社 2012
- 『地球外生命 9の論点』 佐藤勝彦、長沼毅、皆川純ほか、自然科学研究機構編集 ブルーバックス 2012
- 『体験から歴史へ─〈昭和〉の教訓を未来への指針に』 保阪正康、半藤一利、田城明、講談社 2013
- 『立花隆の「宇宙教室」 「正しく思考する技術」を磨く』岩田陽子、日本実業出版社 2014
- 『揺らぐ世界 中学生からの大学講義4』ちくまプリマー新書 2015。川田順造ほか6名
- 翻訳
- 『アメリカ人の雑学おもしろ小百科』バリー・ターシス(講談社 1984)
- 『バーバラ・ハリスの臨死体験』ライオネル・バスコム共著(講談社 1993、講談社+α文庫 1998)
- 『アポロ13号奇跡の生還』ヘンリー・クーパーJr(新潮社 1994、新潮文庫 1998)
目次
はじめに
第一章 北京時代と引き揚げ体験
第二章 幼少時代から高校まで
第三章 安保闘争と渡欧前夜
第四章 はじめてのヨーロッパ
第五章 文藝春秋時代からプロの物書きへ
第六章 二つの大旅行
第七章 「田中角栄研究」と青春の終わり
第八章 ロッキード裁判批判との闘い
第九章 宇宙、サル学、脳死、生命科学
第十章 立花ゼミ、田中真紀子、言論の自由
第十一章 香月泰男、エーゲ、天皇と東大
第十二章 がん罹患、武満徹、死ぬこと