エッジエフェクト
界面作用
福岡伸一対談集
本書は、異なる分野の人と福岡伸一の対談集です。
タイトルの”エッジエフェクト”という耳慣れない言葉は、巻初のヨーヨーマとの対談で説明されています。
”生物学的に2つの生態系が出会う場所で生成される現象を呼ぶ術語”のことで、”生態学的にいうと、森林と砂漠の界面にあるサバンナ、あるいは地政学的にいうと、フランスとドイツの界面にあるアルザス・ロレーヌ地方。そういう場所では、何か激しい、そしてすばらしいことが起こる。つまり、環境も遺伝子も、その界面で起こること、あるいはその相互作用が必要だ”(抜粋)ということです。
生物学とフィールドの異にする人たちやその作品をエッジエフェクトと見立て、その”きしみや契機を知り”、著者が生物としてのあり方を導き出していく。対談相手がバリエーションに富むだけに、それは著者が言うように”どんなときでも実にすがすがしい体験であり、スリリングな発見をもたらしてくれる”。
本書では、計六人もの方と対談を行っていますが、それだけに一人一人の対談は比較的浅いものとなっています。対談の醍醐味は、異なる分野を持った二人が、それぞれの知性や知見をぶつかり合わせた時に起きる”化学反応”に尽きると思いますが、そういう意味で個人的に面白かったのは、桐野夏生、森村泰昌との対談でした。短い対談の中でも、お互いの分野が比較的うまい具合に絡み合っていて話も弾んだように思います。
内容紹介
ベストセラー『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)の著者による初対談集。桐野夏生、柄谷行人、梅原猛、森村泰昌、鈴木光司、小泉今日子など、各界の第一人者との対談を通じて、気鋭の生物学者が想像する、生物としての人間の将来の姿とは?
著者紹介
福岡 伸一(ふくおか・しんいち)
1959(昭和34)年東京生まれ。米ハーバード大学医学部フェロー、京都大学助教授などを経て青山学院大学教授。生物学者。サントリー学芸賞を受賞した『生物と無生物のあいだ』、『動的平衡』『せいめいのはなし』(対談集)ほか、「生命とは何か」をわかりやすく解説した著作多数。他の著書に『フェルメール 光の王国』、訳書に『ドリトル先生航海記』『ガラパゴス』などがある。
目次
エッジエフェクト―新しい生命は、界面に立ち上がるー
欠落したオスと、自己完結するメス 桐野夏生
科学の限界 柄谷行人
生命現象における「美」 森村泰昌
生命とは、流れているもの 小泉今日子
細胞の破壊と再構築 鈴木光司
科学と哲学の融合 梅原猛
あとがき
著者、自著を語る
参考図書