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日本国憲法の二〇〇日

日本国憲法

二〇〇日

半藤一利 文春文庫

 

日本国憲法の二〇〇日 (文春文庫)

日本国憲法の二〇〇日 (文春文庫)

 

 

  本書は著者があとがきで書いているように、「学術書や研究論文ではない。とにかく史実と資料を調べに調べて、それをずらりと並べたうえに、(当時15歳であった)自分の体験を重ねて作り上げた歴史読み物である」と書いているように、当時の自分を思い出し、文献からの知識や引用と、2003年時点での著者の思いや見解とで構成されています。

 玉音放送直後から憲法改正案の閣議決定までを、当時旧制中学生だった著者の目で活写しています。
 敗戦直後は呆然として虚脱状態だった大人が、やがて進駐軍に迎合して主義主張をガラリと変えていくのを見て、少年の著者は憤慨し冷笑します。感服するのは著者の父の鋭い観察眼です。「これでわが国はアメリカが好き放題にぶっ叩いて壊しても、文句ひとつ言えぬ哀れ極まる国になった」「進駐軍の悪行に対しそこまで卑屈になる必要がどこにある」「馬鹿かおまえは。人類が存する限り戦争がなくなるはずはない」。慧眼である。当時は市井の人が真実を見抜いていたとということです。

 内容紹介

3月10日の東京大空襲九死に一生を得た著者は疎開先、茨城県下妻を経て新潟県長岡で日本の敗戦を迎える。いま「歴史探偵」として知られる著者は、そのとき15歳の少年であった。そして日本は、戦後を生きる原理となる新憲法の策定作業に入る。占領政策を決めるGHQ指令が次々と発せられる中、昭和21年3月6日、遂に「憲法改正草案要綱」が閣議決定される。あの敗戦より204日。この苛酷ではあるが希望に満ちた日々を、著者は史家の目に少年の目を織り交ぜつつ、哀切に描ききっている。

 

著者紹介

半藤 一利(はんどう・かずとし)
作家。1930年、東京生まれ。東京大学文学部卒業後、文芸春秋社入社。「週刊文春」「文芸春秋」編集長、専務取締役などを経て現在にいたる。『漱石先生ぞな、もし』(新田次郎文学賞受賞)、『ノモンハンの夏』(山本七平賞受賞)など著書多数。

 

目次

プロローグ          「三月十日」の章
一  昭和二十年八月(1)―「涙滂沱」の章
二  昭和二十年八月(2)―「国体護持」の章
三  昭和二十年八月(3)―「総懴悔」の章
四  昭和二十年九月・1―「青い眼の大君」の章
五  昭和二十年九月・2―「記念写真」の章
六  昭和二十年九月・3―「憲法改正示唆」の章
七  昭和二十年十月・1―「天皇制打破」の章
八  昭和二十年十月・2―「天皇退位論」の章
九  昭和二十年十一月・1―「近衛失格」の章

十  昭和二十年十一月・2ー「陸海軍消滅」の章
十一 昭和二十年十二月・1―「真相はかうだ」の章
十二 昭和二十年十二月・2―「神道指令」の章
十三 昭和二十一年一月・1―「詔書とパージ」の章
十四 昭和二十一年一月・2―「浮浪児とパンパン」の章
十五 昭和二十一年一月・3―「戦争放棄」の章

十六 昭和二十一年二月・1―「三原則」の章
十七 昭和二十一年二月・2―「聖断ふたたび」の章
エピローグ          「大理想」の章

 

参考図書

日本国憲法を生んだ密室の九日間 (角川ソフィア文庫)

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日本国憲法の誕生 増補改訂版 (岩波現代文庫)

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