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NATURE FIX 自然が最高の脳をつくる―最新科学でわかった創造性と幸福感の高め方

NATURE FIX

自然が

最高の脳をつくる

最新科学でわかった

創造性と幸福感の高め方

フローレンス・ウィリアムズ

[訳]栗木さつき・森島マリ

NHK出版

NATURE FIX 自然が最高の脳をつくる 最新科学でわかった創造性と幸福感の高め方

  本書は、自然に関するいろいろな学説や研究者を直接取材し、それらを客観的な視点でみた評価と著者自信の経験値を比較・並行させながら、自然が人にどのような良い影響があるかが、書かれています。内容はとても分かりやすく、また楽しく読むことができます。


著者は、もともと住んでいた田舎から、自然の少ない都市(ワシントン)に移り住んで、なぜだか心身の不調が治らない、というのを皮切りに、その原因をめぐる旅に出ます。
日韓や北欧など様々な土地をめぐり、実際に自然の効用に触れ、研究者の話を聞いた体験がまとめられています。
素晴らしいのは、普段都市生活を送る私たちに向けて、自然の恩恵を受けるのにどうすれば良いのか、という実用的な観点でまとめられていることです。
例えば、章題にもあるように、最初の五分間、一か月に五時間、など、「どの程度の間隔でどれだけ自然に触れれば良いのか」という実用的な観点を常に念頭におかれています。


また、実用的な観点から、単なる自然の崇拝だけでなく、対立的な見方にも触れられています。例えば、自然の中でリラックスした気分になるのは、「自然が人を癒すから」か?それとも「普段の都市生活のストレスから解放されるため、リラックスするから」か?というような、バランスの良い検討がされています。


また、バランスが良いのは、この本全体の特徴です。本の中では自然の影響について様々な観点で紹介されています。たとえば、自然が人に影響する究極的な原因から、視覚的な原因(自然の中のフラクタル模様が人に影響するのでは?)や嗅覚の影響(針葉樹の香りが安らぎをもたらす?)を考察するばかりか、PTSDやADHDの人への影響の紹介など、自然の中での体験がもたらす、様々な人への影響が紹介されています。

特に面白かったのは次の点です。
それは「畏怖」という感情について触れた点です。「畏怖」は、自然など「深みがあって簡単に分類できない」ものに触れると、自分をちっぽけと感じて、かつ、自分が大きなものの一部だとも感じさせるという効果があって、しかも時間を忘れ、他人に親切になるそうです。
これは自然だけでなく美術や数学でも、深みがあると感じられるものに触れると起きる感情らしいです。もともと心理学では、「人の感情が性格や行動に与える良い影響の研究」として、ポジティブ心理学というものがありますが、そこから見過ごされていた「驚異に対する感情の研究」=「畏怖の研究」が近年進んでいることに、たいへん興味を持ちました(ほんとにごく近年、畏怖について研究者が気づき出したそうです)。

都市で生活するサラリーマンから、子供の教育に悩む人、心身に不調をきたしている人まで、この本を読むと、これから自分がどうすれば良いのか、たくさんのアイディアをもらえ、必ず参考になるはずです。

内容紹介

水と緑に触れるだけで あなたの脳はこんなにも変化する!

野外で過ごすと、頭が冴えた気がする?
それは気のせいではありません。

登山やダイビングやランニングなど、アウトドア好きなら知っている「自然の中にいるとリフレッシュする」不思議な感覚。
世界の科学者たちはいま、自然がこのような人の気分やウェルビーイングだけでなく、思考力にも及ぼす影響を数値で示そうとしている。
記憶し、計画を立て、想像力を発揮し、集中する力、そして社交能力までもが、自然によって左右されるというのだ。
自然の中で15分過ごせば血圧とストレスが低下して気分がよくなる一方、45分過ごせば認知機能や活力、熟考する力が増し、3日過ごせば創造性が50%向上するという驚きの実験結果も。
気鋭の科学ジャーナリストが世界中を飛び回り、体当たりで数々の実験に参加して「人間と自然の深いつながり」を突き止めた意欲作!

引用元:NHK出版 

著者等紹介

フローレンス・ウィリアムズ(Florence Williams)

作家、ジャーナリスト、ジョージ・ワシントン大学客員学者。『アウトサイド・マガジン』の編集に携わるかたわら、『ニューヨーク・タイムズ』『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』『ナショナル ジオグラフィック』などに環境、健康、科学をテーマとした記事を寄稿。デビュー作『おっぱいの科学』(梶山あゆみ訳、東洋書林、2013年)は、ロサンゼルス・タイムズ・ブック賞(科学技術部門)を受賞し、『ニューヨーク・タイムズ』紙の「今年注目を集めた100冊」にも選ばれる。

 

栗木さつき(くりき・さつき)

翻訳家。慶應義塾大学経済学部卒業。訳書に、グレアム・イーストン『医者は患者をこう診ている』(河出書房新社)、トレーシー・アロウェイ、ロス・アロウェイ『脳のワーキングメモリを鍛える!』、ヘンリー・マーシュ『脳外科医マーシュの告白』(以上、NHK出版)、ジェフ・ウィルザー『科学でわかった正しい健康法』(大和書房)、サイモン・シネック『WHYから始めよ!』(日本経済新聞出版社)ほか多数。 

森嶋マリ(もりしま・まり)

翻訳家。武蔵野美術大学短期大学部デザイン学科卒業。訳書に、ゼラーナ・モントミニー『折れない心のつくり方』(ハーパーコリンズ・ジャパン)、シェーン・J・ロペス『5年後の自分を計画しよう』、マシュー・ハーテンステイン『卒アル写真で将来はわかる』(以上、文藝春秋)、オヴィディア・ユウ『アジアン・カフェ事件簿1 プーアール茶で謎解きを』(原書房)、ジェラルディン・ブルックス『古書の来歴』(武田ランダムハウスジャパン)ほか多数。

目次

プロローグ─戸外の大気は人を元気にする強壮剤
PART1 「ネイチャーニューロン」をさがして
PART2 最初の五分間──身近な自然
PART3 一か月に五時間──自然に触れる習慣で変わる
PART4 三日間──大自然が脳に与える効果
PART5 庭のなかの都市
エピローグ

 

 

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