読書日記

お薦めの本を紹介します

 騎士団長殺し

 騎士団長殺し

 第一部 顕れるイデア編 
 第ニ部 遷ろうメタファー編
  村上春樹    新潮社 

 この小説では、絵、肖像画というものが伝えることのできる奥深さをいろいろなシーンで、さまざまな言葉を使って表現しています。画家である主人公だけでなく、免色渉、秋川まりえが『免色渉の肖像画』、『白いスバル・フォレスターの男』『秋川まりえ』の肖像画を見たとき反応する様子は、村上春樹自身が絵、肖像画というものはこういうものであって欲しいと、肖像画に寄せる想いなのではないだろうかと思いました。

 今回の小説は、過去の長編小説の素材の寄せ集めという感じがしました。この作家は平易な文章で読ませるという点では、非常に優れていると思います。しかしながら、今回の小説は、1回読んだだけでは、なかなか内容を理解しかねます。川上末映子・村上春樹の「みみずくは黄昏に飛びたつ」を参考に読むと内容をより深く理解できると思います。

 

みみずくは黄昏に飛びたつ

みみずくは黄昏に飛びたつ

 

内容紹介

 久しぶりの一人称(私)で、お馴染みの春樹的モーチフ(妻との別れ、謎めいた穴、いわくありげな美少女、夢精、失踪、メタファー・・・)を大量にちりばめながら象徴的なファンタジーな世界に読者を誘う。

 作中で言及される上田秋成の怪談風でもあり、謡曲とも、ジブリ風とも見える。絵画や文学はもちろん、クルマ、音楽、料理から南京大虐殺まで、とにかくネタが盛り沢山なので、合計千ページを超える物量にもかかわらず、ダレ場はほとんどない。

 今回の特徴は、”私”が妻と別居してから元の鞘に戻るまでの9カ月間の物語であることが、冒頭で宣言されること。2006年(推定)の出来事を、20011年現在から振り返る回想形式になっている。簡単に要約すれば、36歳(当時)の画家である”私”が、ある大きな試練を経て再生し、家庭を取り戻す話だと言ってもいい。

 主な舞台は小田原市郊外の山中に建つ一軒家。高名な画家である雨田具彦(あまだともひこ)のアトリエ兼住居だったその家に越してきた”私”は、そこでさまざま不思議と出会う。その出発点が、屋根裏で見つけた雨田具彦の未発表作「騎士団長殺し」と、谷をはさんで向かいの山に建つ白い邸宅に住む白髪の中年男、免色渉(めんしきわる)。話の展開は例によって自由奔放だが、前作前作とくらべて投げ放し感は比較的少なくきっちり幕が引かれる。

著者紹介

村上春樹(むらかみ・はるき)

1949(昭和24)年、京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。1979年『風の歌を聴け』(群像新人文学賞)でデビュー。主な長編小説に、『羊をめぐる冒険』(野間文芸新人賞)、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(谷崎潤一郎賞)、『ノルウェイの森』、『国境の南、太陽の西』、『ねじまき鳥クロニクル』(読売文学賞)、『海辺のカフカ』、『アフターダーク』、『1Q84』(毎日出版文化賞)、『騎士団長殺し』がある。『神の子どもたちはみな踊る』、『東京奇譚集』などの短編小説集、エッセイ集、紀行文、翻訳書など著書多数。海外での文学賞受賞も多く、2006(平成18)年フランツ・カフカ賞フランク・オコナー国際短編賞、2009年エルサレム賞、2011年カタルーニャ国際賞、2016年ハンス・クリスチャン・アンデルセン文学賞を受賞。

目次

第一部 顕れるイデア

プロローグ

1 もし表面が曇っているようであれば

2 みんな月に行ってしまうかもしれない

3 ただの物理的反射にすぎない

4 遠くから見ればおおかたのものごとは美しく見える

5 息もこときれ、手足も冷たい

 その他  

 

第二部 遷ろうメタファー編

33 目に見えないものと同じくらい、目に見えるものが好きだ

34 そういえば最近、空気圧を測ったことがなっかた

35 あの場所はそのままにしておく方がよっかた

36 試合のルールについてぜんぜん語り合わないこと

37 どんなものごとにも明るい側面がある

 その他