読書日記

お薦めの本を紹介します

死とは生とは

 死はこわくない

  立花隆  文春文庫
死はこわくない (文春文庫)

死はこわくない (文春文庫)

 

 

先日、あるテレビ番組をみてたら、脚本家の橋本寿賀子さんが「死」について、ご自分の考え「死は眠りの延長にある、自分は死後の世界は信じない」というような趣旨をおっしゃって、安楽死についても語っていました。それで、「死」についての著作が多い立花隆さんの本書を読んでみると、橋田寿賀子さんと同じようなことを述べています。

現実の人は不死ではない。誰しも例外ではない。だから、自己にとって死は何であるかを問うことは、誰のうちにも存する問いです。
本書は、著者にとっての死は何かを考察する中で編まれた、示唆に富むインタビューや講演をまとめた短い本です。

第1章は、自殺の問題をエレガントに押さえると共に、学生の頃に死を恐れていたこと、死を恐れていたことを恥じていたことを述べています。そして、哲学者との会話から、死を恐れることを恥じる必要はないと気づいたといいます。また、「死後の世界が存在するかどうかは個々人の情念の世界の問題であって、論理的に考えて正しい答えを出そうとするかどうかの世界の問題ではない。」とバッサリ斬っています。死を恐れた自分を認めながら、いかなる情動的なものにも寄りかからずに論理的に考えていることに、驚きます。

第2章は、共立女子大学で行われた講演を再編集したものであって、看護学生へ向けてなされた講演であり、死期の近い患者が内面で何に直面していて、その人達を看護する上でどのような困難さに向き合わねばならないかを論じています。

第3章は、自身が取材した『NHKスペシャル臨死体験 死ぬとき心はどうなるのか」』の取材過程を番組ディレクターと対談したもので、意識と脳内現象の関係、とりわけ死の間際における両者の特異的関係についての、最新の科学的研究の動向を語り合っています。臨死体験は科学的に解明されつつあるといいます。

死とはそもそも自分がなくなることであり、そのこと自体が怖い。実存主義的に論じるところの死の問題だと思いますが、それについては18頁にさらっと書いてあるだけであり、本書では掘り下げられてはいません。

本書はテーマを詳細に論じた本ではなく、重要な論点をなぞるように概観した本で、本文中でたくさんの参考図書に言及しています。

内容紹介

自殺、安楽死脳死臨死体験。長きにわたり、人の死とは何かを思索し続けた”知の巨人”が、正面から生命の神秘に挑む。「死ぬというのは夢の世界に入っていくのに近い体験だから、いい夢を見ようという気持ちで自然に人間は死んでいくことができるんじゃないか」と、がん、心臓手術を乗り越えた現在の境地を素直に語る。

著者紹介

立花隆(たちばな たかし)

1940年、長崎県生まれ。64年東京大学文学部仏文科卒業後、文藝春秋社入社。66年に退社し、67年東京大学哲学科に学士入学。その後、ジャーナリストとして活躍。83年、「徹底した取材と卓越した分析力により幅広いニュージャーナリズムを確立した」として、第31回菊池寛賞受賞。98年、第1回司馬遼太郎賞受賞。著書『田中角栄研究全記録』『日本共産党の研究』『農協』『サル学の現在』『宇宙からの帰還』『青春漂流』『脳死』『天皇と東大』『小林・益川理論の証明』『20歳の君へ』ほか多数。

 

目次

第一章 死はこわくない
1「死」を怖れていた若き日
失恋で自殺?
安楽死についてどう考えるか
「死後の世界」は存在するか
2ここまでわかった「死の瞬間」
心停止後も脳は動き続ける
体外離脱の謎
「神秘体験」はなぜ起こるのか
人生の目的は心の平安
3がんと心臓手術を乗り越えて
理想の死に方
延命治療はいらない
生命の大いなる環の中へ

[特別エセー] ぼくは密林の象のごとく死にたい

第二章 看護学生に語る「生と死」
人は死ぬ瞬間に何を思うか
死にゆく者へのインタビュー
厳しい看護師の現場
葛藤に次ぐ葛藤
燃え尽き症候群
難しいがん患者のケア
筑紫哲也さんの場合
余命の告知はどうすべきか
勝手に告知した、と激怒した家族
人間は死んだらゴミになる?
ナチスに殺された子どもの絵
「肉体は人間存在の外殻に過ぎない」
見えない存在との語らい
臨死体験はなぜ似ているのか
長期療養病棟の現実
尊厳死とどう向き合うか

第三章 脳についてわかったすごいこと
「意識」とは何か
脳科学「最大の謎」とは
脳はケミカルマシン
夢は思い通りに変えられる
意識を数式化できる?
心を持つ機会はできるのか
死んだときに意識はどうなるのか
東洋の世界観に近づく

あとがき
文庫版のためのあとがき

関連サイト

www6.nhk.or.jp