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世界史のなかの昭和史

 世界史のなかの昭和史

   半藤一利  平凡社
世界史のなかの昭和史

世界史のなかの昭和史

 

  本書は、「昭和史」「昭和史B面」に続く、「昭和史3部作」の完結編です。そして、同時代の世界史との関連の中で、昭和史を位置づけてます。
近代史において、開国を経て日清・日露戦争第一次世界大戦を体験し、国際連盟常任理事国となっていた日本が、世界の影響を受けた様子が描かれてます。
 また、本書は、主にヒトラーのドイツ、スターリンソ連、それに、英米との関連が書かれています。
 満州事変から日中戦争、日独伊三国軍事同盟から日米開戦に至る道のりは、高校日本史程度の知識だと政党政治の腐敗と軍部の暴走で片付けられてしまうこともあるかもしれませんが、事実はそんな単純な話ではありません。
 ドイツもソ連も、日本の都合に合わせて同盟や条約を結んでくれるわけではなく、当然彼らのヨーロッパ戦略での思惑がまずあって、日本と手を結ぶことが自国に有利になるという計算があるから動く。ドイツやソ連が動けば、当然イギリスやアメリカもそれに応じた動きを見せる。そして、日本を利用しようとする国があって、それにまんまと乗せられてしまう。

 本書では、ヒトラーはなぜ三国同盟を望んだのか、スターリンはなぜ中立条約を結んだのか、それが英米にどのような影響を及ぼしたのかが詳細に書かれてます。
 ヨーロッパ列強の駆け引き、それに翻弄され、踊らされる日本という構図は、新たな視点をもたらしてくれると同時に、当時の指導者たちの「世界史認識の足らな」さを突きつけられ、暗澹たる思いにさせられます。
 後ろの方で、半藤氏の歴史観である「わたくしはどうしても、国家というものは所詮、”天”の意思というものの抗し難い力によって押し流されていく、とする歴史観にとらわれてしまうのです」(p.422)には、納得してしまいます。

内容紹介

昭和史を世界視点で見ると何が見えてくるのか? 
ヒトラースターリンルーズベルトが動かした戦前日本の盲点とは? 
未来の戦争を避けるために必読の半藤昭和史三部作・完結編

著者紹介

半藤 一利(はんどう・かずとし)

1930(昭和5)年、東京生れ。東京大学卒業後、文藝春秋に入社。「週刊文春「文藝春秋」編集長、専務取締役などを経て、作家となる。1993(平成5)年、『漱石先生ぞな、もし』で新田次郎文学賞、1998年、『ノモンハンの夏』で山本七平賞を受賞する。2006年、『昭和史 1926-1945』『昭和史 戦後篇 1945-1989』で、毎日出版文化賞特別賞を受賞。『決定版 日本のいちばん長い日』『聖断―昭和天皇鈴木貫太郎―』『山本五十六』『ソ連満洲に侵攻した夏』『清張さんと司馬さん』『隅田川の向う側』『あの戦争と日本人』『日露戦争史1』など多数の著書がある。

目次

プロローグ  歴史の皮肉と大いなる夢想―長い探偵報告のはじめに
第1話  摂政裕仁親王の五年間―大正から昭和へ
第2話  満洲事変を中心にして―昭和五年~八年
第3話  日独防共協定そして盧溝橋事件―昭和九年~十二年
第4話  二つの「隔離」すべき国―昭和十二年~十三年
第5話  「複雑怪奇」と世界大戦勃発―昭和十四年
第6話  昭和史が世界史の主役に躍りでたとき―昭和十五年
第7話  「ニイタカヤマノボレ」への道―昭和十六年
エピローグ  「ソ連仲介」と「ベルリン拝見」―敗戦から現代へ

              あとがき

    関連年表

    参考文献