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我々の世界観を根底からくつがえす未来論

ホーキング、未来を語る

 スティーブン・ホーキング 

[訳]佐藤 勝彦 アーティストハウス

ホーキング、未来を語る

ホーキング、未来を語る

 

 内容紹介

未来に何が起きるか予測する。自由に時間旅行を楽しむ。別の場所へ瞬時に移動する―そんな人類の夢に、「車椅子の天才科学者」ホーキングが果敢に挑んだ。最新宇宙論からゲノム研究の将来、M理論から人類の未来へ、ホーキングの話は果てしなく広がり、人々を魅了する。250点以上の図版を駆使し、ホーキングが宇宙と人類の未来に秘められた謎を解き明かす。超ベストセラー『宇宙を語る』待望の続編。

   現代物理学の基礎を築いたアインシュタインの偉業を紹介する第1章「相対論小史」と、相対論と量子論の融合を目指した第2章「時間の形」をベースに、最新の宇宙論がもたらす宇宙像やタイムマシン、人類の未来など、読みごたえのあるテーマが続く。アリストテレスプトレマイオスの時代から、経時的に宇宙論をたどる前著とは対照的に、章ごとにテーマを設定。カラーイラストをほぼ見開きごとに使い、よりわかりやすく宇宙論や著者のメッセージを伝えるように工夫されている。

   本書の真骨頂は、やはり宇宙論だ。前著の英語初版が刊行されたのは1988年。以後、実は宇宙論は新たな局面にさしかかっている。これまでの理論では説明のつかない「真空のエネルギー」といった課題や、超新星の観測による宇宙の加速膨張の発見、気球による宇宙背景放射の観測結果などにより、従来の定説が揺らいでいるのだ。こうした状況下、「無境界仮説」や「虚時間」を提案する著者は、新しい宇宙像を示している。「われわれは“クルミの殻”に閉じ込められていてもなお、自分自身を限りなく広がった宇宙の王者だと考えるのです」という「クルミの殻の中の宇宙」像こそ、本書の原題であり、一番のメッセージにほかならない。有力な5つの超ひも理論を統一し得る夢の「M理論」も注目だ。

   著者の本は、相変わらず難解といえば難解である。だが、ちゃめっ気たっぷりのイラストや写真が多数あり、「現代の生きる伝説」といわれる天才は意外にもユーモアたっぷりだった。宇宙論のほかに、「私たちが自滅することがないとすると、まず100年以内に太陽系内の惑星へと生存圏を広げる」、「いずれヒトの遺伝子工学は始まるだろう」といった大胆な予測もある。前著は途中で挫折した人も、本書なら楽しく読み通せるかもしれない。

著者紹介

スティーブン・ホーキング

1942年~2018年、オックスフォード生まれ。オックスフォード大学、ケンブリッジ大学大学院で物理学と宇宙論を専攻。ブラックホール特異点定理や蒸発理論などで、早くから理論物理学の第一人者として認められる。1974年に史上最年少の32歳でイギリス王立協会会員になる。1979年、ニュートンも就いたケンブリッジ大学ルーカス記念講座教授に選出される。筋萎縮性側索硬化症と闘いながら精力的に研究を続け、「現代でもっとも優れた科学者の一人」として世界中で高く評価されている。

目次

序文

第1章 相対論について
第2章 時間の形
第3章 クルミの殻の中の宇宙
第4章 未来を予測する
第5章 過去を守る
第6章 私たちの未来は?
第7章 ブレーン新世界

用語集

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訳者あとがき