ヒトはどのようにしてつくられたか
シリーズ ヒトの科学1 THE SCIENCE OF MAN
山極 寿一 岩波書店
ヒトはどのようにしてつくられたか (シリーズ ヒトの科学 1)
- 作者: 山極寿一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2007/01/23
- メディア: 単行本
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ヒトとは何かを自然科学の見地から問い直す良書です。サル、類人猿、ヒトを科学的に比較する7つの論文と2つの対談で成り立ち、また、読みやすい文章でまとめられています。なかでも、ヒトとボノボとチンパンジーを比較した性の進化についての対談は興味深いものがあります。
ヒトが600万年前にチンパンジーの祖先と分岐してすぐに直立二足歩行を始めたのはなぜか?なぜ言語を持つことができたか?などへの最新の見解が研究者の視点でまとめられています。
700万年前にヒトがチンパンジー/ボノボとの共通祖先から分岐したのとほぼ同時に直立二足歩行を始めたこと、ホモ・サピエンスが20万年前にエチオピア辺りで誕生したことは、わかっています。
人間が、サバンナでの肉食動物による捕食リスクを多産で乗り切る戦略を採ったため、複数の幼子の世話を妻が行うことになり、夫に食料を運んで来させるために、確実に自分の子であることが保証される一夫一婦制を採ると共に、妻の発情期がわからないようにした、という仮説には、興味深いものがあります。
動物は遺伝子というハード変化によって環境対応してきた訳ですが、人間は言語(モデル認識)というソフト変化ができるようになったため、「ハードの進化がこれ以上、不要になったのかも?」という仮説は興味深いです。さらに「AIのようなメタ言語的進展によって、今後どうソフト変化が進んでいくのかは未知である」ということも言及されてます。音楽(子守唄等)が言語の起源かもという仮説も興味深いです。
内容紹介
ダーヴィンの進化論以来、ヒトと他の動物とが共通の祖先を分かち合うことは科学的な事実として了解されるようになった。では進化の歴史をどこまで遡れば、ヒトという定義を当てはめることができるのだろうか。どの特徴がヒトに特有のものと言えるのか。とくにヒトの特質とされる社会性は、化石として残ることがないだけに類推が難しい。霊長類学、人類遺伝学、先史人類学、生態人類学、認知心理学の最先端の成果を結集して、その問いに答え、現代のヒトの身体と心が抱えている過去の遺産を明らかにする。
編者紹介
山極 寿一(やまぎわ・じゅいち)
1952年生れ。京都大学大学院理学研究科教授。日本霊長類学会会長。専門=人類進化論。ゴリラやチンパンジーの野外研究に従事し、初期人類の生活様式や社会性の解明を目指す。自然保護運動でも国際的に活躍。
目次
はじめに
まえがき
1 原初的人間とは何か
2 食から見たサルと類人猿の進化
3 類人猿との分岐点
4 類人猿と人類はどれほど近いか
5 座談 森林と狩猟生活はヒトに何をもたらしたか
6 道具と文化
7 心を読むこと、他者を操作すること
8 対談 性の進化―余剰な性行動と進化
9 ヒトの社会性とは何か
参考図書
暴力はどこからきたか 人間性の起源を探る (NHKブックス)
- 作者: 山極寿一
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2007/12/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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人類は何を失いつつあるのか: ゴリラ社会と先住民社会から見えてきたもの
- 作者: 山極寿一,関野吉晴
- 出版社/メーカー: 東海教育研究所
- 発売日: 2018/03/28
- メディア: 単行本
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関連サイト
アウストラロピテクス、旧人、原人、ホモ・エレクトスやネアンデルタール人 ...
http://sozoron.org/archives/sozoron_qanda/creation_evolution_7