セクシィ・ギャルの大研究
女の読み方・読まれ方・読ませ方
セクシィ・ギャルの大研究―女の読み方・読まれ方・読ませ方 (岩波現代文庫)
- 作者: 上野千鶴子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2009/05/15
- メディア: 文庫
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本書は著者が34歳のとき書いた処女作なわけですが、著者の自分自身が女性であることのこだわりから、処女喪失作と称しているのはおもしろいです。
タイトルはエンターテイメント指向だが、中味は著者も述べているとおり、学術的な研究成果のまとめという要素もあり、興味本位で読むには、向いていないかもしれないです。
副題に、「女の読み方・読まれ方・読ませ方」となっています。さまざまな雑誌の中に含まれる「色気」のある広告を分析しています。主に、広告の中に女性のしぐさ、姿勢、動作を通して、その意味することを述べています。
しぐさの記号がおもしろいです。即ち、社会に起こっている現象や表現を、著者の独自の視点から解き明かしています。
「あとがき」で印象に残った文章が有ります。
・・・勤め先の女子短大で、私は授業中にわいせつ用語を多発し、学生サンから、女も三十歳を過ぎると、顔も赤らめずにあんなスケベなことが口にできるのか、と呆れられています。けれど、自分が理解したいことを、まずことばにできるのが、対象を操作するための先決条件なのです。自分のたいせつなところを、アレとかアソコとか言っているうちは、まだまだ先は遠いようです。自分の性を、まず口に出して言ってみること、それが認識への第一歩です。そして「おxxこ」という4文字ことばがよほど気分悪ければ、それに代わるべつなことばを発明することですね。・・・
このひらきなおりは正鵠を射ておりかつケンカ腰であるのも頼もしいです。
内容紹介
もの欲しげな目に半開きの唇,しなりくねらせた肢体.世に流布するお色気広告を,上野千鶴子がズバリ分析.社会が演出し,女に演技を求めている「女らしさ」,男が演技したがっている「男らしさ」の実態を大胆に,そして軽妙な筆致であばき出す.男女ともにまとっている「社会的衣服」を身ぐるみはがされる,キケンで快感一杯の処女作.
■編集部からのメッセージ
本書は1982年,上野千鶴子34歳の時の“処女喪失作”である.カッパブックスから刊行され,当時のカバーでは,前から山口昌男,後ろから栗本慎一郎が,推薦文の挟み撃ち.
山口氏曰く,「若い男性がこの本を読んだら,あまりの知的ショックで不能に陥るかもしれない.しかし,これからの男と女,あるいは女と男のあいだのコミュニケーションは,この本によって粉砕された両性の神話の断片の中からつくりあげられた,新しい人間のイメージの上に築きあげられることに疑いはない」と断言.
栗本氏曰く,「誰かが,私の書き方に似ていると言ったが,それだけはウソだ.私は,こんなスケベな本は書けない」とある.
京都の平安女学院短期大学助教授だった著者は,巷にあふれるお色気広告を大分析.なぜ女はうっすら口を開け,不自然に体をくねらせているのか,なぜ男はよりデカく描かれ肩までいからせているのか.購買欲を刺激する広告に,セックスの隠喩が見事にほどこされている実態を,あられもない表現でズバズバ斬りまくり,社会が演出している「男らしさ」「女らしさ」を見事あばいて大評判になった.
たくさんの広告写真をイラストで起こし例示.27年前の本であるからして,引き合いに出されるのは,例えば百恵ちゃんだったり,聖子ちゃんだったりするが,でも今,缶コーヒーの自販機にある安室奈美恵のポスターだって,結局は上野センセイの指摘どおりの法則を踏んでいるのである.
さて,ややおふざけ気味にここまで書いてきたが,この本,実はまじめな学術本.アメリカの社会学者アーヴィング・ゴフマンの行動学の手法を,日本社会に援用したものという.今回の文庫化の最大のウリは,著者自身による解題である.
1 本書の背景
2 人間行動学という方法
3 非言語学的記号への関心
4 本書の読まれ方
5 処女作から
6 幸福なスタート
という見出しのある,大変充実したもの.男と女のその後がどうなったのか,当時の予想と引き比べてみた箇所も非常におもしろい.また,自身の仕事を振り返り,「硬派と軟派,上半身と下半身,国民国家からパンティまで,ジェンダー研究に扱えない領域はなく,それはわたしという生きた人間の関心領域のすべてを網羅していたと言えるだろう」と言い切る.
という訳で,岩波現代文庫に華やかに登場した「上野千鶴子の仕事」の第1弾.同月刊行の主著『家父長制と資本制』をはじめ,今後も「上野千鶴子の仕事」は続々現代文庫のラインナップに並ぶ予定である.
著者紹介
上野千鶴子(うえの・ちづこ)
1948年,富山県に生まれる.1977年,京都大学大学院社会学研究科博士課程修了.平安女学院短期大学,京都精華大学などを経て,東京大学名誉教授.著書に『女という快楽』『スカートの下の劇場』『家父長制と資本制』『近代家族の成立と終焉』『差異の政治学』『老いる準備』『生き延びるための思想』『おひとりさまの老後』ほか.
目次
プロローグ この世は男と女でできている。そこで…
1 「夫婦茶碗」のおそろしい秘密―巨人軍は勝たねばならぬ、女は弱くあらねばならぬ
2 女が「発情のお知らせ」をするとき―五歳だろうが百歳だろうが、女がみんなぶりっ子をする理由
3 女は「曲芸」に生きる―さあさあごらん。オンナが見せる、つらい世間の綱渡り
4 ハズレ者とハズサレ者―鬼が見つけてくれないカクレンボほど悲しい遊びがあるだろうか
5 女は、ここまで「できあがって」いる―男の自尊心が裸のミノムシにされそうな、きつーい時代の到来
エピローグ 女社会は、至福の千年王国か
あとがき
自著解題
イラストレーション資料出典一覧
参考図書