共に生きる
ということ
be humane
100年インタビュー
緒方貞子 PHP研究所
本書は、NHKBSで、2011年1月放映の「100年インタビュー・国際協力機構(JICA)理事長・緒方貞子」をもとに構成、1時間放映分を書籍としたものです。内容は、人道支援・復興支援の現場の経験から、平和を築く共存の哲学、国際社会での日本の役割などを語っています。
インタビューの聞き手はNHKの三宅民雄アナウンサーで、彼の問いが、各セクションの冒頭にあります。これに答える形で緒方貞子さんの考えが述べられます。歴史に学び、他者に学び、常に先のことを考える。という冒頭に1頁をつかったメッセージが、基本姿勢であり、最終頁の百年後のみなさんへ、という「先」への思いは、本書から飛翔して未来へつながります。
緒方さんは、外交官の父に連れられて幼少より外国に接し、当時は希少であっただろう留学を二度にわたり経験します。そして、豊かな国際性を身につけ、さらに成長を続けた聡明な女性が見る、視野が広く大きい、俯瞰する目で地球全体の人々の暮らしを見つめ、現地で人のいとなみに直接接し、心を傾けてきていることが、この小さな本から見えてきます。
三宅アナウンサーの問いは、ごく一般の人を代表する内容を選んでおり、緒方さんは、その問いをきっかけとして、明確な自分自身の考えを披露しています。読者が受け取り、吟味するべき内容は、やさしい話し言葉で伝えます。たとえば、「援助により、貧しくどうしようもない状況を何とかする、というのはチャリティなんですよね。チャリティだけでは国は伸びない」といいます。
「国際貢献なんてね、そこに国際があって、私が何かあげますというのではなくて、自分が中に入っているんですよ、国際の中に。だから国際の中で暮らしているという現実から来る、責任分担じゃないんですか」。
根本の考え方が清々しい。自分を偉く見せようとするような上から目線は微塵もなく、しかも、地球全体を俯瞰し、吟味し、よい方向を指し示す大きな目を持っています。
内容紹介
時代を切り開いてきた人の半生をたどり、思いや夢に迫るNHKBSの番組「100年インタビュー」の単行本化。今回は元国連難民高等弁務官で、現在国際協力機構特別顧問の緒方貞子さんのお話。
父は外交官、曽祖父は犬養毅元首相という家に生まれ、アメリカや中国で幼少期を過ごす。大学卒業後、二度のアメリカ留学を果たし、結婚後は夫の仕事で大阪、ロンドンに住み、子育てをしながら、国際基督教大学の非常勤講師に。市川房枝の働きかけで国連公使として総会へ出席。その後、多国間外交の経験を積む。1991年、それまでヨーロッパの男性政治家が就いていた国連難民高等弁務官に初の女性、初の学者出身者で就任。冷戦集結後の宗教や民族間の対立が激化した10年間、世界中の難民支援を指揮した。その後、国際協力機構理事長として復興支援に尽力。前例のない難局を乗り越えてきた日々に貫いてきた信念、平和を築く哲学、国際社会での日本の役割を語る。
引用元:PHP研究所
著者紹介
緒方 貞子(おがた・さだこ)
1927年、東京生まれ。聖心女子大学文学部卒業後、アメリカに留学し、ジョージタウン大学で国際関係論修士号を、カリフォルニア大学バークレー校で政治学博士号を取得。74年、国際基督教大学准教授、80年、上智大学教授に就任。76年、日本人女性として初の国連公使となり、特命全権公使、国連人権委員会日本政府代表を務める。91年より第8代国連難民高等弁務官として難民支援活動に取り組む。2000年12月、退任。01年より、人間の安全保障委員会共同議長、アフガニスタン支援日本政府特別代表、国連有識者ハイレベル委員会委員、人間の安全保障諮問委員会委員長を歴任。
目次
第1章 国連難民高等弁務官という仕事につくまで
子ども時代
アメリカに二度の留学
博士論文は満州事変をテーマに
第2章 難民救済という仕事
イラク・クルド難民支援
歴史を変えた決断
政治解決が遅れた支援
第3章 復興支援を通して思うこと
開発援助にスピードを
格差とどう向き合うのか
共存のために
一〇〇年後のみなさんへ
参考図書