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お薦めの本を紹介します

日本人の勝算ー今後の日本の進むべき道についての提案ー

日本人の勝算

  人口減少x高齢化x資本主義

  デービッド・アトキンソン

    東洋経済新報社

 

日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義

日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義

 

 

本書は、 デービッド・アトキンソンさんの日本人への警鐘だと思います。本書の核心は、日本の人口の大幅減少、急速な少子高齢化の中で、今までのような人口増によるGDP増は不可能であり、GDPをあげて現在の社会福祉政策を維持するためには「最低賃金を上げて生産性を向上させ、GDPを増やす」ことが肝要だ、ということです。もしそうしなければ、日本経済と年金制度などの社会制度は崩壊する、とアトキンソンさんは主張します。


 著者が日本人の国民性や特質をこれほどまでに熟知しているのには驚きます。著者の30年間の日本生活がそうさせたのでしょう。日本人は過去と現在と未来が静止しているとかのような判断をする。兎に角、過去を踏襲する。本書の248頁において「日本人の『変らない力』は異常」という項目があり、「これだけの危機に直面しても、自ら変ろうとしないのは、普通の人間の感覚では理解できません。・・・「日本は世界第3位の経済大国である。・・・日本は技術大国である。。。よって、日本のやり方は正しいし、変える必要はない。・・・私が『変える必要がある』と指摘すると、次のような反論が返ってきます。。。。前例がない。・・・今までのやり方は日本文化だ。見えない価値がある。・・・このような偏屈とも言える意見を持つ人が少なくない・・・」と書かれています。このところは、鋭い指摘だと思います。
 著者は「日本人の優秀さ」のなかに、日本人の性格の短所をよく理解しておられると思います。日本人はほとんどが変化を嫌う保守的な民族です。そして時の変化に疎いです。ただ目の前の現象的な変化に敏で、それへの対処は驚くほど上手いが、所詮対処療法でしかすぎないことをわかっていません。抜本的な解決策ではないのに、それで満足してしまう。
 
 アトキンソンさんの本を読んで、あらためて日本経済が存亡の危機に陥ろうとしていることを理解しました。アトキンソンさんはその抜本的な解決策をわれわれ日本人に提示していますが、これが正しい選択なのか、正しい分析なのかは分かりません。ただ、実行してみる価値はあると思いました。 
 実行するには「リスクを恐れない勇気」が必要だ。たとえ失敗してもよい。現状において、何もしないことが最悪である。ただ、アトキンソンさんの母国の大政治家ウィンストン・チャーチルが口が酸っぱくなるくらいに英国人に話したと言います、「リスクを恐れず勇気を出して実行せよ。失敗は問わない」を、日本人ができるかどうかです。
 日本国民の「安全第一」の保守性を考えると、アトキンソンさんの提言を実行しない確率は高いです。アトキンソンさんを通じて、英国人をあらためて知る機会にもなりました。アトキンソンさん、日本人を愛するがため本書を書いてくださったと思いました。

内容紹介

あのデービッド・アトキンソンが「118人の外国人エコノミストの英知」を結集し、人口減少ニッポンの処方箋を「すべて」描ききる。

 

「日本人の優秀さ」こそ、この国の宝だ――。
日本在住30年、元ゴールドマン・サックス「伝説のアナリスト」、
日本文化に精通する「国宝の守り人」、日本を愛するイギリス人だから書けた!
外国人エコノミスト118人の英知を結集して示す、日本人の未来。
「人口減少×高齢化」というパラダイムシフトに打ち勝つ7つの生存戦略とは。

■筆者からのコメント■
日本に拠点を移してから30年、さまざまな出来事を目の当たりにしてきました。
経済の低迷、それにともなう子どもの貧困、地方の疲弊、文化の衰退
――見るに耐えなかったというのが、正直な気持ちです。
厚かましいと言われても、大好きな日本を何とかしたい。
これが私の偽らざる本心で、本書に込めた願いです。
世界的に見て、日本人はきわめて優秀です。
すべての日本人が「日本人の勝算」に気づき、行動を開始することを願って止みません。
――デービッド・アトキンソン

引用元:東洋経済新報社

 

著者紹介

デービッド・アトキンソン

1965年イギリス生まれ。日本在住30年。オックスフォード大学「日本学」専攻。裏千家茶名「宗真」拝受。
1992年ゴールドマン・サックス入社。金融調査室長として日本の不良債権の実態を暴くレポートを発表し、注目を集める。2006年に共同出資者となるが、マネーゲームを達観するに至り2007年に退社。2009年創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手掛ける小西美術工藝社に入社、2011年同会長兼社長に就任。2017年から日本政府観光局特別顧問を務める。
『デービッド・アトキンソン 新・観光立国論』(山本七平賞、不動産協会賞受賞)『新・所得倍増論』『新・生産性立国論』(いずれも東洋経済新報社)など著書多数。2016年に『財界』「経営者賞」、2017年に「日英協会賞」受賞。

目次

はじめに 日本人の勝算

第1章 人口減少を直視せよ――今という「最後のチャンス」を逃すな
第2章 資本主義をアップデートせよ――「高付加価値・高所得経済」への転換
第3章 海外市場を目指せ――日本は「輸出できるもの」の宝庫だ
第4章 企業規模を拡大せよ――「日本人の底力」は大企業でこそ生きる
第5章 最低賃金を引き上げよ――「正当な評価」は人を動かす
第6章 生産性を高めよ――日本は「賃上げショック」で生まれ変わる
第7章 人材育成トレーニングを「強制」せよ――「大人の学び」は制度で増やせる

おわりに

 

参考図書

  

デービッド・アトキンソン 新・生産性立国論

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世界一訪れたい日本のつくりかた

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